【算数】特殊算の解き方(9) 損益算の解き方を解説します
はじめに
※本記事は2020年04月19日に一から書き直しています。
「損益算」と呼ばれる文章題について詳しく解説します。公式的なものは使わずに、「原価」「定価」「売価」「利益」などの内容に関して、それらの本質的な意味からしっかり理解出来るような感じで、図を使って説明しています。
上記の説明を前半で行い、後半では実践問題として、比較的簡単そうな例題をいくつか取り上げて、その解き方を解説しています。
ご注意
ここで述べる「損益算」の内容は「算数」や「数学」等の問題に関するものであり、いわゆる企業会計的な話とは異なりますのでご留意下さい。
日ごろ私が質問サイト等で目にするものは「算数」の問題の他、中学校レベルの「数学」の問題、及び「SPI」の問題などですが、そのような問題に関しては以下の内容で適合していると思います。
「損益算」の詳しい解説
以下の例題(自作の問題です)を用いて説明を進めます。
<例題>
原価が200円の品物に4割の利益を見込んで定価を付けたが、売れなかったので定価の2割引きで売った。
(1)定価はいくらか。
(2)売価はいくらか。
(3)利益は原価の何パーセントか。
以上の例題で、線分図を用いて説明を進めます。
まず、下図のように「原価を10割(100%)」として考えます。
それに原価の4割、すなわち、
200円×0.4=80円
を利益として見込んで定価を付けた訳ですから、
定価は、
原価200円+予定利益80円=280円 …(1)の答え
となっており、それを線分図で表すと以下のようになります。
※説明を進めやすいように線分を上下二本としていますが、品物が2つになった訳ではありませんのでご留意下さい。
さて、上記の「10割(100%)」や「4割(40%)」という割合(図の赤文字)は、線分図の下段(「原価」がベース)のものでしたが、
次に割引を考える時は、「定価の何割引」かを考える為、下図の青文字のように、上段の「定価」を10割(100%)で表した割合でとらえ直すことになります。
※今回の例題では丁寧に「定価の2割引き」と記していますが、問題によっては単に「2割引き」とだけ書かれているケースもありますが、一般的にはこれは「定価の2割引き」を指しています。
その「定価280円」の2割引きで売る訳ですから、割引額は、
280円×0.2=56円
従って売価は、定価から割引額を差し引いた、
280円-56円=224円 …(2)の答え
以上を図で表すと下図の通りとなります。
割引後の売価で売った際の利益の額は、上図でも示していますが、
売価224円-原価200円=24円
であり、この利益が原価の何パーセントかを考える時は、線分図の下段の赤文字の割合(原価を10割(100%)として表す割合)で考えますので、
利益24円÷原価200円=0.12=12% …(3)の答え
となります。
※ ※ ※ ※ ※
今回の例題は超初級編でしたが、後ほど実践問題をいくつか解きますが、実際の問題は「求めるもの(未知数)」がどれであるかに関して様々なパターンがありまして、本来なら「最初の出発点」であるはずの「原価」が未知数となっている問題も普通にあります。
しかしながら、どのようなパターンの問題であっても、基本的には上で説明した内容を考えることになります。すなわち、
・「原価」「(予定の)利益」「定価」「値引」「売価」「(実際の)利益」の構造がどのようになっているかを的確に把握する。
・割合(〇割もしくは〇%など)について、それは線分図の下段(原価ベース)に関するものか、上段(定価ベース)に関するものかを的確に把握する。
という2点をクリアしていれば、大半の「損益算」は簡単に解けるようになると思います。
実践問題を解いてみる
質問サイトの過去ログから問題を引用し、解いてみたいと思います。上で説明した内容は全て理解出来ている前提で、解答を記述しています。
比較的難度が低めの初級的な問題を選んでいます。
解答の流れや答えに間違いはありませんが、途中に誤字脱字等がある場合はご容赦下さい。
■損益算(その1)
原価の2割増しの定価で売ろうとしたが売れなかったので定価から1割引きの32400円で売った。原価はいくらか。
以下、私が考えた解答です。
売価32400円から遡って考えます。
定価から1割引きすると32400円だった訳ですから、
定価×0.9=32400円
従って両辺を0.9で割ると、
定価=32400円÷0.9=36000円
以上、定価は36000円と分かり、それが、
定価=原価の10割+原価の2割=原価の12割
なので、すなわち、
原価×1.2=36000円
従って両辺を1.2で割ると、
原価=36000円÷1.2=30000円 …答え
と分かります。
■損益算(その2)
品物pとqそれぞれ10個仕入れ、18000円かかりました。pは原価の二割、qは原価の四割の利益を見込んで販売したところ、全て売れて24000円になった。pの定価はいくらか。
以下、私が考えた解答です。
「割引」が登場しない問題となっています。また、特殊算の要素が含まれており、算数による方法でも解けますが(鶴亀算)、ここでは連立方程式で記します。
品物pとqが10個ずつで仕入れ値が18000円ですから、1個ずつ(原価)の合計は、
18000円÷10=1800円 …①
また10個ずつの定価での売上(全て売れた)は24000円ですから、1個ずつの定価の合計は、
24000円÷10=2400円 …②
さて、品物pの原価をP(円)、品物qの原価をQ(円)とすると、
①より、
P+Q=1800 …③
Pに2割の利益を見込み、Qに4割の利益を見込むと、②なので、
1.2P+1.4Q=2400 …④
③、④を連立方程式として解くと答えが得られます。
③の両辺を1.4倍すると、
1.4P+1.4Q=2520 …③'
加減法で、式③'-式④ より、
0.2P=120
両辺を0.2で割ると、
P=600
以上、品物pの原価は600円と分かったので、その定価は、
600円×1.2=720円 …答え
■損益算(その3)
仕入れたものに35%の利益を見込んで定価をつけたが売れないので、定価の20%引きにしたところ320円の利益が出た。このときの原価はいくらか。
以下、私が考えた解答です。
原価100%に、その35%を上乗せしたものが定価100%ですから、
定価の100%=原価の135%
従って、定価の20%引きは、
定価の80%=原価の135%×0.8=原価の108%
これで320円の利益が出たわけですから、すなわち原価の8%が320円に相当すると分かりますので、
原価×0.08=320円
両辺を0.08で割れば、
原価=4000円 …答え
■損益算(その4)
ある商品を定価の20%引きにして
利益が原価の20%だった。
定価が300円だとすると原価はいくらになるか。
以下、私が考えた解答です。
定価の20%引き、すなわち定価の80%で売ると、
原価100%に対して20%の利益が上乗せされますので、
定価の80%=原価の120%
両辺を1.25倍すると、
定価の100%=原価の150%
定価(の100%)は300円ですから、
原価の150%=300円
従って、
原価の100%=300円÷1.5=200円 …答え
■損益算(その5)
ある品物を定価の20%引きで売ると、原価の12%の利益が得られた。この品物の定価は原価に何%の利益を見込んでつけたものか。
以下、私が考えた解答です。
具体的な金額が出てこないタイプの問題となっています。
定価の20%引きで売ると、原価の12%の利益が得られるので、
定価の80%=原価の112%
両辺を1.25倍すると、
定価の100%=原価の140%
以上により、定価は原価100%に対して40%の利益を上乗せしていたと分かる。
答え 40%
おわりに
以上、損益算について詳しく解説しました。
今回も1問だけありましたが、難しい問題になってくると、損益算の要素に加えて他の要素、すなわち算数の言い方で言えば鶴亀算や倍数算などの要素(数学なら方程式を用いて考える)が絡めた問題となっています。
これは「損益算」に限らず、例えば「速度算」なども同じ話です。すなわち、「損益算」とか「速度算」などが「最も基礎的な要素」としてあった上で、それに色んな要素を上乗せして問題の難度が上げてあります。
従って今回記事の前半で述べたような「損益算の基礎部分」は「改めて一々真剣に考えなくても直感で分かる」という感じで仕上がっていないと(後半で紹介した程度の問題なら「見ただけで大体の解き方が頭に浮かぶ」程度に仕上がっていないと)、その先にある「もっと難度の高い問題」をスムーズに解くことは出来ません。
そんな訳で、その大切な「基礎」の部分が出来るだけ理解しやすいように心がけて解説してみました。どなたかの理解の一助となれば幸いに思う次第です。