【算数】速度の文章問題の解き方の解説(4) 流水算を詳しく解説します
はじめに
※本記事は2020/04/26に一から書き直しています。
※以下、速度の公式や、その計算などに関しては詳しく理解出来ている前提となっています。まずはそこからお知りになりたい方は、本ブログの別記事で詳しく解説していますので、コチラをご参照下さい。
算数(数学)における「流水算」と呼ばれる文章題について解説致します。
流水算とは、流れのある川を上ったり下ったりする船に関する速度の文章題となります。
前半では公式とその意味を説明致します。意味が理解出来ていれば、公式は覚えていなくても解くことが出来ます。
後半では解き方の事例として、実際の問題(3問)に対する解答(解説)を示したいと思います。
本記事での言葉の定義
以下、本記事では以下の太文字の文言で統一致します。
上り速度…船が川を上る時の速度
下り速度…船が川を下る時の速度
静水速度…流れが無い所での船自身の速度
流れ速度…川の流れの速度
公式とその意味の説明
■公式
公式1. 上り速度=静水速度-流れ速度
公式2. 下り速度=静水速度+流れ速度
公式3. 静水速度=(上り速度+下り速度)÷2
公式4. 流れ速度=(下り速度-上り速度)÷2
■公式を「意味」から解説
「公式1」に関しては、川を上るということは、川の流れに逆らって(押し戻されながら)進むことになりますので、「上り速度」は、流れの無い所での「静水速度」よりも、「流れ速度」に押し戻される分だけ遅くなります。従って「上り速度」は、「静水速度」から「流れ速度」を減じた値となります。
「公式2」は上記とは逆で、川を下るということは、川の流れに押し進められながら進むことになりますので、「下り速度」は、流れの無い所での「静水速度」よりも、「流れ速度」に押し進められる分だけ速くなります。従って「下り速度」は、「静水速度」に「流れ速度」を加えた値となります。
以上の2つは「一度聞いたら二度と忘れない」という感じの「分かりやすい話」かと思います。この2つ(公式1と公式2の内容)から、「公式3」と「公式4」は「当たり前の結論」として導けますので、それを説明します。
※ ※ ※ ※ ※
例えば「静水速度」が時速4km、「流れ速度」が時速1kmのケースを考えます。すると、
公式1より、
上り速度=時速4km-時速1km=時速3km
公式2より、
下り速度=時速4km+時速1km=時速5km
「1目盛りを時速1km」として、下り速度、静水速度、上り速度の順で線分図を書くと以下の通りです。
下り速度(時速5km)├─┼─┼─┼─┼─┤
静水速度(時速4km)├─┼─┼─┼─┤
上り速度(時速3km)├─┼─┼─┤
上段の「下り速度」と下段の「上り速度」の、中段の「静水速度」に対する差は同じ1目盛り(時速1km)ずつです(☆)。これは、「下り速度」や「上り速度」というのは、「静水速度」に対して「流れ速度」(時速1km)を足したり引いたりしていることを考えると、極めて当たり前の話です。
従って「下り速度」の5目盛りと、「上り速度」の3目盛りの平均をとれば(すなわち足して2で割れば)、「静水速度」の4目盛りと等しくなります。これが「公式3」に相当します。
また上記の☆により、「下り速度」の5目盛りと、「上り速度」の3目盛りの差は、「流れ速度」(1目盛り)の2倍の2目盛りとなっている訳ですから、この差を2で割ると「流れの速度」(1目盛り)となります。これが「公式4」に相当します。
以上のように考えると、「公式3」と「公式4」というのは特に覚えていなくても、「考えれば簡単に分かる」内容となっています。
また、「公式の当てはめだけでは解けない」ような難しい問題になった際に、上記の線分図で示したような考え方が出来るほうが、より解きやすくなると思います。
実際の「流水算」を解いてみる
質問サイトの過去ログより3問をチョイスして、実際に私が解いてみた解答(解説)を以下に記します。
「単なる公式への当てはめというほど単純では無いが、それほど難しくない」という感じの問題を選んでいます。
■問題1
静水において分速20mの船がある。これで川の上流のA点から下流のB点に行くのに36分かかり、B点からA点にいくのに54分かかった。この川の水の流れは分速何mかを求めよ。
■解答(解説)
移動距離が同じ場合、速度は所要時間の逆比となるので、
下り速度:上り速度=54:36=3:2
従って、この比の数値で言えば、「静水速度」と「流れ速度」は、
静水速度=(3+2)÷2=2.5
流れ速度=(3-2)÷2=0.5
以上により、「静水速度」は「流れ速度」の、
2.5÷0.5=5(倍)
と分かり、また「静水速度」が分速20mなので、
流れ速度=分速20m÷5=分速4m …答え
■問題2
ある舟が川を30キロ下ったところ2時間30分かかりました。その後、川のながれの速さが下がるときの3倍になったので同じところをのぼるのに5時間かかりました。この舟の静水時の速さは時速何キロですか?
■解答(解説)
2時間30分=2.5時間
なので、
下り速度=30km÷2.5時間=時速12km
また、
上り速度=30km÷5時間=時速6km
差は、
下り速度-上り速度=時速12km-時速6km=時速6km …①
下る際の(速さが3倍になる前の)「流れ速度」を
├┤
として、それぞれの差に着目した線分図を書くと、
下り速度├───────┼┤時速12km
静水速度├────┼┼┼┤時速?km
上り速度├────┤時速6km
「下り速度」は「静水速度」より1目盛り長く、
「静水速度」は「上り速度」より3目盛り長い
と分かるので(上りは流れの速さが3倍の為)、
「下り速度」と「上り速度」の差は、
1目盛り+3目盛り=4目盛り
で、これが①の時速6kmに相当するので、
1目盛り=時速6km÷4=時速1.5km
これが下る際の「流れ速度」なので、
静水速度=下り速度-流れ速度=時速12km-時速1.5km=時速10.5km …答え
■問題3
静水時の速さが毎時12Kmの船が川下のA町から川上のB町まで上がるのに3時間かかり、下りは機械の故障で船の速さが1/3におちたので、5時間かかりました。
この川の流れの速さは毎時□Kmですか。
■解答(解説)
注) 問題文中の「1/3」は分数の「3分の1」のことです。
上りの「静水速度」は時速12kmで、
下りはその3分の1になったので、
下りの「静水速度」は時速4km
従って、
上りの静水速度+下りの静水速度=時速16km …①
さて、
上り速度=上りの静水速度-流れ速度
下り速度=下りの静水速度+流れ速度
なので、これらを足すと、
上り速度+下り速度=上りの静水速度+下りの静水速度
(右辺の「流れ速度」は-と+で消える)
これの右辺は①なので、
上り速度+下り速度=時速16km …②
また、速度は所要時間の逆比なので、
上り速度:下り速度=5:3 …③
(合計は5+3=8) …④
実際の速度の合計は②なので、
②÷④=16÷8=2(倍)
より、③を2倍すると実際の速度なので、
上り速度=5×2(倍)=時速10km
下り速度=3×2(倍)=時速6km
以上により、
上り速度=上りの静水速度-流れ速度
に分かった値を代入すると、
時速10km=時速12km-流れ速度
なので、
流れ速度=時速12km-時速10km=時速2km …答え
下り速度=下りの静水速度+流れ速度
に代入して確かめを行うと、
時速6km=時速4km+時速2km …OK
おわりに
以上、算数(数学)の「流水算」について詳しく解説しました。
より応用的な問題に関する、方程式を使っての解き方をご参照になりたい方は、本ブログの別記事にて記していますので、コチラをご覧下さい。