算数(数学)の「比を簡単にする」考え方を詳しく解説します
はじめに
算数(数学)の「比を簡単にする」ような問題を解く際においての考え方、解き方を詳しく解説致します。
以下のパターンに分けて解説しています。
(1)大きな整数を簡単な比で表す
(2)分数の比を簡単にする
(3)小数の比を簡単にする
「やり方」を解説するというよりかは、「本質的な意味」を図解で説明する感じで記しています。
(1)大きな整数を簡単な比で表す
以下の例題に沿って説明します。
例題) ある企業は男性社員が200人、女性社員が150人います。男性社員と女性社員の人数の比を、最も簡単な整数を用いて表しなさい。
先に解き方と式と答えを書くと以下の通りです。
男性200人、女性150人、これらの人数を最大公約数50で割ると答えになります(下の算式)。
男性:女性=200人:150人=4:3 …答え
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以下、上記の内容の「本質的な意味」が理解出来るように、図を使って説明します。
男性200人、女性150人という「人数」を長さとして、線分図で表すと下図の通りです。
これらの長さの「比」を考えることになります。
「比」を考えるということは、図で言えば「上下二本の線分を両方とも、同じ長さの目盛りで区切ると、何目盛りと何目盛りずつとなっているか」を考えることになります。
200人、150人を共に最大公約数の50で割って「4:3」にする作業というのは、下図のように「50人」という目盛りで区切ると「上段4目盛り:下段3目盛り」になる、ということを意味しています。
例えば最大ではない公約数25(人)で区切ると(1目盛りが25人)、上段8目盛り、下段6目盛りとなって(上図を2倍細かい間隔の目盛りで区切っている状態)、「更に2目盛りずつまとめて、1目盛り50人ずつにまとめられるじゃないか」ということになり、すなわち「8:6」というのは比率としては間違っていませんが「最も簡単な整数で表す」という条件を満たさないことになります。
もちろん、途中式として、
200人:150人=8:6=4:3 …答え
と「8:6」を途中で挟むのは全く構いません。これ以上簡単に出来ない(図で言えばこれ以上目盛りの数を減らせない)「4:3」と最終的に表すことが、求められている「正解」となります。
(2)分数の比を簡単にする
以下の例題に沿って説明します。
例題) 4分の3 と 3分の2 を最も簡単な整数の比で表しなさい。
先に解き方と式と答えを書くと以下の通りです。
4分の3と3分の2を分母の最小公倍数12で通分して、
12分の9と12分の8として、
その分子の「9:8」が答え
となります(下の算式)。
※ ※ ※ ※ ※
以下、上記の内容の「本質的な意味」が理解出来るように、図を使って説明します。
下図の上段の線分の長さを1とすると、
1の長さを4分割した内の3つ分が4分の3(中段)、
1の長さを3分割した内の2つ分が3分の2(下段)、
と表せます(下図)。
4分の3 と 3分の2 を、
分母の最小公倍数12で通分して、
12分の9 と 12分の8
に変形することの意味は、
下図のように「1目盛りが12分の1」の目盛り(赤色)を入れると(上段の1が12等分されている目盛り)、中段は9目盛り分となって12分の9となり、下段は8目盛り分となって12分の8になる、ということを意味しています。
従って中段と下段の長さの比は、同じ長さの目盛り数の比となることから、
「9:8」が求められる答えとなります。
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最初に通分する際、最小ではない公倍数、例えば24で通分したとすると、
中段が24分の18、下段が24分の16
となっていて、整数(目盛り)の比は「18:16」となりますが(上図を2倍細かい間隔の目盛りで区切っている状態)、これだと「更に2目盛りずつまとめても、中段も下段もきっちり区切れるじゃないか」となり、すなわち「18:16」というのは比率としては間違っていませんが「最も簡単な整数で表す」という条件を満たさないことになります。
従って途中式として「18:16」があって、
それらを2で割って最終的な答えが
「9:8」となっている場合は、
基本的には問題ありません。
(3)小数の比を簡単にする
以下の例題に沿って説明します。
例題) 0.9 と 0.6 を最も簡単な整数の比で表しなさい。
先に解き方と式と答えを書くと以下の通りです。
0.9と0.6をそれぞれ10倍して9と6として、それらを最大公約数の3で割って3と2にすれば、それが答えとなります(下の算式)。
0.9:0.6=9:6=3:2 …答え
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以下、上記の内容の「本質的な意味」が理解出来るように、図を使って説明します。
上段を1、中段を0.9、下段を0.6の長さで線分で表すと下図の通りです。
0.9と0.6をそれぞれ10倍して
9と6にすることの意味は、
上段の1を10分割した「長さ0.1の目盛り」(下図の赤い目盛り)を上段に10目盛り入れて、同じ長さの目盛りを、
中段の0.9に入れると9目盛り、
下段の0.6に入れると6目盛り、
となるようなことを意味しています。
以上により中段と下段の長さの比は「9:6」と分かる訳ですが、下図のように赤い目盛りを3つずつまとめた「青い目盛り」で区切り直しても、中段も下段も綺麗に区切ることが出来て、その「青い目盛り」の数で言えば「3:2」となっています。これが「9と6を、最大公約数の3で割る」ことの意味となります。
なお、答えを途中段階の「9:6」のままとした場合、表している比率は間違ってはいませんが、「最も簡単な整数で表す」という条件を満たさないことになります。
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例えば最初に10倍ではなく100倍してしまって
「90:60」とした場合でも、上図より目盛りが10倍細かいだけの話ですから、比率としては合ってます。
例えばそれを10で割って「9:6」とし、更に3で割って「3:2」までたどり着いていれば、途中の計算は多くなっても解答としては基本的に正解となります。
重要な留意点
最初にある数が整数なのか分数なのか小数なのかに関わらず、「最初にある数の大きさは変わらない」という点は極めて重要となります。すぐ上で解説した小数のケースで説明します。
上の解説では0.9と0.6に単位はありませんでしたが、これに長さの単位m(メートル)が付いていたとします。すなわち、
0.9mと0.6mを最も簡単な比で表しなさい。
という問題であったとすると、長さの単位なので、上での解説中の線分図が更にイメージしやすくなると思います(上段が1m、中段が0.9m、下段が0.6m)。
これを解くと、上での解説と同様に、
0.9m:0.6m=9:6=3:2 …答え
となる訳ですが、最初にある数(すなわち0.9mと0.6m)の長さが途中で9mとか6mに長くなったりしている訳では決してなく、あくまで途中で「9:6」と考えている際も最後に「3:2」と考えている際も、それらは目盛り(比率)を表す値なのであって、長さ(最初の数の大きさ)は0.9mと0.6mのままである訳です。
すなわちイメージとしては、途中で10を掛けたり最後に3で割ったりする際に、線分の長さが伸びたり縮んだりするイメージは間違いなのであって、線分の長さは変わらず目盛りの数が変化する、というのが正しいイメージとなります。
今回の例題のような初歩的な問題を解く際にはここに勘違いがあっても正しい答えにたどり着けると思いますが、問題の難度が上がってくると、ここが正しくイメージ出来ているかどうかは極めて重要なポイントになると思っています。
おわりに
以上、算数(数学)の「比を簡単にする」考え方について詳しく解説しました。