【算数】特殊算の解き方(9) 損益算の解き方を解説します
はじめに
※本記事は2020年04月19日に一から書き直しています。
「損益算」と呼ばれる文章題について詳しく解説します。公式的なものは使わずに、「原価」「定価」「売価」「利益」などの内容に関して、それらの本質的な意味からしっかり理解出来るような感じで、図を使って説明しています。
上記の説明を前半で行い、後半では実践問題として、比較的簡単そうな例題をいくつか取り上げて、その解き方を解説しています。
ご注意
ここで述べる「損益算」の内容は「算数」や「数学」等の問題に関するものであり、いわゆる企業会計的な話とは異なりますのでご留意下さい。
日ごろ私が質問サイト等で目にするものは「算数」の問題の他、中学校レベルの「数学」の問題、及び「SPI」の問題などですが、そのような問題に関しては以下の内容で適合していると思います。
「損益算」の詳しい解説
以下の例題(自作の問題です)を用いて説明を進めます。
<例題>
原価が200円の品物に4割の利益を見込んで定価を付けたが、売れなかったので定価の2割引きで売った。
(1)定価はいくらか。
(2)売価はいくらか。
(3)利益は原価の何パーセントか。
以上の例題で、線分図を用いて説明を進めます。
まず、下図のように「原価を10割(100%)」として考えます。
それに原価の4割、すなわち、
200円×0.4=80円
を利益として見込んで定価を付けた訳ですから、
定価は、
原価200円+予定利益80円=280円 …(1)の答え
となっており、それを線分図で表すと以下のようになります。
※説明を進めやすいように線分を上下二本としていますが、品物が2つになった訳ではありませんのでご留意下さい。
さて、上記の「10割(100%)」や「4割(40%)」という割合(図の赤文字)は、線分図の下段(「原価」がベース)のものでしたが、
次に割引を考える時は、「定価の何割引」かを考える為、下図の青文字のように、上段の「定価」を10割(100%)で表した割合でとらえ直すことになります。
※今回の例題では丁寧に「定価の2割引き」と記していますが、問題によっては単に「2割引き」とだけ書かれているケースもありますが、一般的にはこれは「定価の2割引き」を指しています。
その「定価280円」の2割引きで売る訳ですから、割引額は、
280円×0.2=56円
従って売価は、定価から割引額を差し引いた、
280円-56円=224円 …(2)の答え
以上を図で表すと下図の通りとなります。
割引後の売価で売った際の利益の額は、上図でも示していますが、
売価224円-原価200円=24円
であり、この利益が原価の何パーセントかを考える時は、線分図の下段の赤文字の割合(原価を10割(100%)として表す割合)で考えますので、
利益24円÷原価200円=0.12=12% …(3)の答え
となります。
※ ※ ※ ※ ※
今回の例題は超初級編でしたが、後ほど実践問題をいくつか解きますが、実際の問題は「求めるもの(未知数)」がどれであるかに関して様々なパターンがありまして、本来なら「最初の出発点」であるはずの「原価」が未知数となっている問題も普通にあります。
しかしながら、どのようなパターンの問題であっても、基本的には上で説明した内容を考えることになります。すなわち、
・「原価」「(予定の)利益」「定価」「値引」「売価」「(実際の)利益」の構造がどのようになっているかを的確に把握する。
・割合(〇割もしくは〇%など)について、それは線分図の下段(原価ベース)に関するものか、上段(定価ベース)に関するものかを的確に把握する。
という2点をクリアしていれば、大半の「損益算」は簡単に解けるようになると思います。
実践問題を解いてみる
質問サイトの過去ログから問題を引用し、解いてみたいと思います。上で説明した内容は全て理解出来ている前提で、解答を記述しています。
比較的難度が低めの初級的な問題を選んでいます。
解答の流れや答えに間違いはありませんが、途中に誤字脱字等がある場合はご容赦下さい。
■損益算(その1)
原価の2割増しの定価で売ろうとしたが売れなかったので定価から1割引きの32400円で売った。原価はいくらか。
以下、私が考えた解答です。
売価32400円から遡って考えます。
定価から1割引きすると32400円だった訳ですから、
定価×0.9=32400円
従って両辺を0.9で割ると、
定価=32400円÷0.9=36000円
以上、定価は36000円と分かり、それが、
定価=原価の10割+原価の2割=原価の12割
なので、すなわち、
原価×1.2=36000円
従って両辺を1.2で割ると、
原価=36000円÷1.2=30000円 …答え
と分かります。
■損益算(その2)
品物pとqそれぞれ10個仕入れ、18000円かかりました。pは原価の二割、qは原価の四割の利益を見込んで販売したところ、全て売れて24000円になった。pの定価はいくらか。
以下、私が考えた解答です。
「割引」が登場しない問題となっています。また、特殊算の要素が含まれており、算数による方法でも解けますが(鶴亀算)、ここでは連立方程式で記します。
品物pとqが10個ずつで仕入れ値が18000円ですから、1個ずつ(原価)の合計は、
18000円÷10=1800円 …①
また10個ずつの定価での売上(全て売れた)は24000円ですから、1個ずつの定価の合計は、
24000円÷10=2400円 …②
さて、品物pの原価をP(円)、品物qの原価をQ(円)とすると、
①より、
P+Q=1800 …③
Pに2割の利益を見込み、Qに4割の利益を見込むと、②なので、
1.2P+1.4Q=2400 …④
③、④を連立方程式として解くと答えが得られます。
③の両辺を1.4倍すると、
1.4P+1.4Q=2520 …③'
加減法で、式③'-式④ より、
0.2P=120
両辺を0.2で割ると、
P=600
以上、品物pの原価は600円と分かったので、その定価は、
600円×1.2=720円 …答え
■損益算(その3)
仕入れたものに35%の利益を見込んで定価をつけたが売れないので、定価の20%引きにしたところ320円の利益が出た。このときの原価はいくらか。
以下、私が考えた解答です。
原価100%に、その35%を上乗せしたものが定価100%ですから、
定価の100%=原価の135%
従って、定価の20%引きは、
定価の80%=原価の135%×0.8=原価の108%
これで320円の利益が出たわけですから、すなわち原価の8%が320円に相当すると分かりますので、
原価×0.08=320円
両辺を0.08で割れば、
原価=4000円 …答え
■損益算(その4)
ある商品を定価の20%引きにして
利益が原価の20%だった。
定価が300円だとすると原価はいくらになるか。
以下、私が考えた解答です。
定価の20%引き、すなわち定価の80%で売ると、
原価100%に対して20%の利益が上乗せされますので、
定価の80%=原価の120%
両辺を1.25倍すると、
定価の100%=原価の150%
定価(の100%)は300円ですから、
原価の150%=300円
従って、
原価の100%=300円÷1.5=200円 …答え
■損益算(その5)
ある品物を定価の20%引きで売ると、原価の12%の利益が得られた。この品物の定価は原価に何%の利益を見込んでつけたものか。
以下、私が考えた解答です。
具体的な金額が出てこないタイプの問題となっています。
定価の20%引きで売ると、原価の12%の利益が得られるので、
定価の80%=原価の112%
両辺を1.25倍すると、
定価の100%=原価の140%
以上により、定価は原価100%に対して40%の利益を上乗せしていたと分かる。
答え 40%
おわりに
以上、損益算について詳しく解説しました。
今回も1問だけありましたが、難しい問題になってくると、損益算の要素に加えて他の要素、すなわち算数の言い方で言えば鶴亀算や倍数算などの要素(数学なら方程式を用いて考える)が絡めた問題となっています。
これは「損益算」に限らず、例えば「速度算」なども同じ話です。すなわち、「損益算」とか「速度算」などが「最も基礎的な要素」としてあった上で、それに色んな要素を上乗せして問題の難度が上げてあります。
従って今回記事の前半で述べたような「損益算の基礎部分」は「改めて一々真剣に考えなくても直感で分かる」という感じで仕上がっていないと(後半で紹介した程度の問題なら「見ただけで大体の解き方が頭に浮かぶ」程度に仕上がっていないと)、その先にある「もっと難度の高い問題」をスムーズに解くことは出来ません。
そんな訳で、その大切な「基礎」の部分が出来るだけ理解しやすいように心がけて解説してみました。どなたかの理解の一助となれば幸いに思う次第です。
【算数】速度の文章問題の解き方の解説(4) 流水算を詳しく解説します
はじめに
※本記事は2020/04/26に一から書き直しています。
※以下、速度の公式や、その計算などに関しては詳しく理解出来ている前提となっています。まずはそこからお知りになりたい方は、本ブログの別記事で詳しく解説していますので、コチラをご参照下さい。
算数(数学)における「流水算」と呼ばれる文章題について解説致します。
流水算とは、流れのある川を上ったり下ったりする船に関する速度の文章題となります。
前半では公式とその意味を説明致します。意味が理解出来ていれば、公式は覚えていなくても解くことが出来ます。
後半では解き方の事例として、実際の問題(3問)に対する解答(解説)を示したいと思います。
本記事での言葉の定義
以下、本記事では以下の太文字の文言で統一致します。
上り速度…船が川を上る時の速度
下り速度…船が川を下る時の速度
静水速度…流れが無い所での船自身の速度
流れ速度…川の流れの速度
公式とその意味の説明
■公式
公式1. 上り速度=静水速度-流れ速度
公式2. 下り速度=静水速度+流れ速度
公式3. 静水速度=(上り速度+下り速度)÷2
公式4. 流れ速度=(下り速度-上り速度)÷2
■公式を「意味」から解説
「公式1」に関しては、川を上るということは、川の流れに逆らって(押し戻されながら)進むことになりますので、「上り速度」は、流れの無い所での「静水速度」よりも、「流れ速度」に押し戻される分だけ遅くなります。従って「上り速度」は、「静水速度」から「流れ速度」を減じた値となります。
「公式2」は上記とは逆で、川を下るということは、川の流れに押し進められながら進むことになりますので、「下り速度」は、流れの無い所での「静水速度」よりも、「流れ速度」に押し進められる分だけ速くなります。従って「下り速度」は、「静水速度」に「流れ速度」を加えた値となります。
以上の2つは「一度聞いたら二度と忘れない」という感じの「分かりやすい話」かと思います。この2つ(公式1と公式2の内容)から、「公式3」と「公式4」は「当たり前の結論」として導けますので、それを説明します。
※ ※ ※ ※ ※
例えば「静水速度」が時速4km、「流れ速度」が時速1kmのケースを考えます。すると、
公式1より、
上り速度=時速4km-時速1km=時速3km
公式2より、
下り速度=時速4km+時速1km=時速5km
「1目盛りを時速1km」として、下り速度、静水速度、上り速度の順で線分図を書くと以下の通りです。
下り速度(時速5km)├─┼─┼─┼─┼─┤
静水速度(時速4km)├─┼─┼─┼─┤
上り速度(時速3km)├─┼─┼─┤
上段の「下り速度」と下段の「上り速度」の、中段の「静水速度」に対する差は同じ1目盛り(時速1km)ずつです(☆)。これは、「下り速度」や「上り速度」というのは、「静水速度」に対して「流れ速度」(時速1km)を足したり引いたりしていることを考えると、極めて当たり前の話です。
従って「下り速度」の5目盛りと、「上り速度」の3目盛りの平均をとれば(すなわち足して2で割れば)、「静水速度」の4目盛りと等しくなります。これが「公式3」に相当します。
また上記の☆により、「下り速度」の5目盛りと、「上り速度」の3目盛りの差は、「流れ速度」(1目盛り)の2倍の2目盛りとなっている訳ですから、この差を2で割ると「流れの速度」(1目盛り)となります。これが「公式4」に相当します。
以上のように考えると、「公式3」と「公式4」というのは特に覚えていなくても、「考えれば簡単に分かる」内容となっています。
また、「公式の当てはめだけでは解けない」ような難しい問題になった際に、上記の線分図で示したような考え方が出来るほうが、より解きやすくなると思います。
実際の「流水算」を解いてみる
質問サイトの過去ログより3問をチョイスして、実際に私が解いてみた解答(解説)を以下に記します。
「単なる公式への当てはめというほど単純では無いが、それほど難しくない」という感じの問題を選んでいます。
■問題1
静水において分速20mの船がある。これで川の上流のA点から下流のB点に行くのに36分かかり、B点からA点にいくのに54分かかった。この川の水の流れは分速何mかを求めよ。
■解答(解説)
移動距離が同じ場合、速度は所要時間の逆比となるので、
下り速度:上り速度=54:36=3:2
従って、この比の数値で言えば、「静水速度」と「流れ速度」は、
静水速度=(3+2)÷2=2.5
流れ速度=(3-2)÷2=0.5
以上により、「静水速度」は「流れ速度」の、
2.5÷0.5=5(倍)
と分かり、また「静水速度」が分速20mなので、
流れ速度=分速20m÷5=分速4m …答え
■問題2
ある舟が川を30キロ下ったところ2時間30分かかりました。その後、川のながれの速さが下がるときの3倍になったので同じところをのぼるのに5時間かかりました。この舟の静水時の速さは時速何キロですか?
■解答(解説)
2時間30分=2.5時間
なので、
下り速度=30km÷2.5時間=時速12km
また、
上り速度=30km÷5時間=時速6km
差は、
下り速度-上り速度=時速12km-時速6km=時速6km …①
下る際の(速さが3倍になる前の)「流れ速度」を
├┤
として、それぞれの差に着目した線分図を書くと、
下り速度├───────┼┤時速12km
静水速度├────┼┼┼┤時速?km
上り速度├────┤時速6km
「下り速度」は「静水速度」より1目盛り長く、
「静水速度」は「上り速度」より3目盛り長い
と分かるので(上りは流れの速さが3倍の為)、
「下り速度」と「上り速度」の差は、
1目盛り+3目盛り=4目盛り
で、これが①の時速6kmに相当するので、
1目盛り=時速6km÷4=時速1.5km
これが下る際の「流れ速度」なので、
静水速度=下り速度-流れ速度=時速12km-時速1.5km=時速10.5km …答え
■問題3
静水時の速さが毎時12Kmの船が川下のA町から川上のB町まで上がるのに3時間かかり、下りは機械の故障で船の速さが1/3におちたので、5時間かかりました。
この川の流れの速さは毎時□Kmですか。
■解答(解説)
注) 問題文中の「1/3」は分数の「3分の1」のことです。
上りの「静水速度」は時速12kmで、
下りはその3分の1になったので、
下りの「静水速度」は時速4km
従って、
上りの静水速度+下りの静水速度=時速16km …①
さて、
上り速度=上りの静水速度-流れ速度
下り速度=下りの静水速度+流れ速度
なので、これらを足すと、
上り速度+下り速度=上りの静水速度+下りの静水速度
(右辺の「流れ速度」は-と+で消える)
これの右辺は①なので、
上り速度+下り速度=時速16km …②
また、速度は所要時間の逆比なので、
上り速度:下り速度=5:3 …③
(合計は5+3=8) …④
実際の速度の合計は②なので、
②÷④=16÷8=2(倍)
より、③を2倍すると実際の速度なので、
上り速度=5×2(倍)=時速10km
下り速度=3×2(倍)=時速6km
以上により、
上り速度=上りの静水速度-流れ速度
に分かった値を代入すると、
時速10km=時速12km-流れ速度
なので、
流れ速度=時速12km-時速10km=時速2km …答え
下り速度=下りの静水速度+流れ速度
に代入して確かめを行うと、
時速6km=時速4km+時速2km …OK
おわりに
以上、算数(数学)の「流水算」について詳しく解説しました。
より応用的な問題に関する、方程式を使っての解き方をご参照になりたい方は、本ブログの別記事にて記していますので、コチラをご覧下さい。
【算数】速度の文章問題の解き方の解説(3) 通過算を詳しく解説します
はじめに
※本記事は2020年04月20日に、一から全て書き直しています。
※以下、速度の公式や、その計算などは深く理解出来ている前提となっています。まずはそこからお知りになりたい場合は、本ブログの別記事に詳しく記していますので、コチラをご参照下さい。
算数や数学の文章題として登場する「通過算」に関して、ここでは基本的なことを詳しく解説致します。
「通過算」の内容を平たく書くと、主に列車が橋やトンネルなどを通過するようなシーンを扱う文章題となります。「どれだけの距離を列車が進むのか」を把握するのが要点となります。それさえ把握出来れば、残りは通常の速度算と同様の計算となります。
以下、パターンごとに説明を進めます。なお、文中の「例題」は全て私の自作問題となっています。
「点」を通過するパターン
電柱や人など、(現実には太さがありますが)太さの無い「点」の前を列車が通過するパターンです。一般的な問題文では「通過する」という表現の他、「通り過ぎる」などもあると思います。
以下、例題を解く形で説明します。
例題:長さが60mで速さが毎秒20mの列車が、電柱の前を通過するのに何秒かかりますか。
※ ※ ※ ※ ※
例題の状況を絵で書くと下図の通りです。
列車は左から右に進むものとして、実線の位置で電柱に差し掛かった列車が、破線の位置まで進むのに必要な時間を考えることになります。なお、図の見方は次以降のパターンも全て同じです。
図より明らかに、列車が進む距離は列車自身の長さである60mです。図中の「進む距離60m」は列車の先端に着目して書いています(後端に着目しても同じ60m)。
従って所要時間は、
距離÷速さ=60m÷毎秒20m=3秒 …答え
以上のように、「進む距離」を把握する部分がこの「通過算」の要点であり、それは次以降のパターンも全て同様となります。
長さのある橋などを通過するパターン
橋の他にも、トンネルその他を問わず、「長さのある区間」を通過するパターンとなります。一般的な問題文では、「通過する」という表現の他に、「橋を渡り始めてから渡り終わるまで」などの表現もあります。
例題:長さが60mで速さが毎秒20mの列車が、100mの橋を通過するには何秒かかりますか。
※ ※ ※ ※ ※
例題の状況を絵で書くと下図の通りです。
列車の先端でも後端でもどちらでも良いですが、例えば先端に着目すると、進む距離は、
橋の長さ100m+列車自身の長さ60m=160m
と分かります。
従って所要時間は、
距離÷速さ=160m÷毎秒20m=8秒 …答え
トンネルの中に隠れているパターン
主にトンネルの中に完全に入ってから出始めるまでの、外からは全く見えない時間を算出するパターンとなります。もちろん問題文の文意が同じであれば、トンネル以外の橋やその他であっても全く同じ考えとなります。
例題:長さが60mで速さが毎秒20mの列車が、200mのトンネルに完全に入ってから、トンネルから出始めるまでの時間は何秒ですか。
※ ※ ※ ※ ※
例題の状況を絵で書くと下図の通りです。
先ほどのパターンと同様に、列車の先端に着目すると、列車が進む距離は、
トンネルの長さ200m-列車自身の長さ60m=140m
と分かります。
従って所要時間は、
距離÷速さ=140m÷毎秒20m=7秒 …答え
列車どうしがすれ違うパターン
2つの列車の双方が動くので、少し難しいパターンとなります。
例題:長さが60mで速さが毎秒20mの列車Aと、長さが90mで速さが毎秒10mの列車Bがすれ違うには何秒かかりますか。
※ ※ ※ ※ ※
下図の上段が、左側の赤い列車が列車Aで左から右に進み、右側の青い列車が列車Bで右から左に進むものとして、すれ違いが始まる瞬間を表したものです。
列車B(青)から見た列車A(赤)の相対速度は、
毎秒20m+毎秒10m=毎秒30m …①
ですから、
上図の下段のように、列車B(青)は停止しているものとして、その代わりに列車A(赤)の速さを①の毎秒30mで考え直しても、同じ所要時間が得られることになります。
このように考えると、すれ違いが終わるまでには、上図の下段を見ると明らかですが、停止している列車B(青)に対して列車A(赤)が、
列車Bの長さ90m+列車Aの長さ60m=150m
進めば良いと分かるので、その所要時間は、
距離÷速さ=150m÷毎秒30m=5秒 …答え
と分かります。
速い列車が遅い列車を追い越すパターン
上記と同様の考え方となります。
例題:長さが60mで速さが毎秒20mの列車Aが、長さが90mで速さが毎秒10mの列車Bを追い越すには何秒かかりますか。
※ ※ ※ ※ ※
下図の上段が、左側の赤い列車が列車Aで左から右に進み、右側の青い列車が列車Bで同じく左から右に進むものとして、追い越しが始まる瞬間を表したものです。
列車B(青)から見た列車A(赤)の相対速度は、
毎秒20m-毎秒10m=毎秒10m …①
ですから、
上図の下段のように、列車B(青)は停止しているものとして、その代わりに列車A(赤)の速さを①の毎秒10mで考え直しても、同じ所要時間が得られることになります。
このように考えると、追い越しが終わるまでには、上図の下段を見ると明らかですが、停止している列車B(青)に対して列車A(赤)が、
列車Bの長さ90m+列車Aの長さ60m=150m
進めば良いと分かるので、その所要時間は、
距離÷速さ=150m÷毎秒10m=15秒 …答え
と分かります。
おわりに
以上、「通過算」に関する基本的な部分について詳しく解説しました。
応用的な問題の解き方の事例をご参照になりたい方は、当ブログの別の記事に記していますので、コチラをご覧下さい。
【算数】速度の文章問題の解き方の解説(2) 旅人算(出会い算・追いつき算)を詳しく解説します
はじめに
今回は旅人算(出会い算・追いつき算)に関して詳しく解説します。
速度に関する基本的な計算に関しては深く理解出来ている前提となります。まずはその部分を詳しくお知りになりたい方は、本ブログの別記事(コチラ)をご参照下さい。
では、解説を始めます。
出会い算
例題.家から学校まで900mあります。兄は家から学校へ向けて、弟は学校から家へ向けて同時に出発しました。兄は分速90mで、弟は分速60mで歩きます。2人が出会うのは出発してから何分後ですか。
(この問題は私の自作となります)
標準的な解き方
線分図を書くと以下の通りです。
兄--→←-弟
2人は900m離れていて、同じ時間内に兄のほうが弟よりも多く歩き、かつ2人の歩いた距離の合計が900mであることを表しています。
2人が歩いた時間が□分として、
兄が進んだ距離
分速90m×□分
弟が進んだ距離
分速60m×□分
従って2人の合計は
分速90m×□分+分速60m×□分
カッコでくくって書き直すと
(分速90m+分速60m)×□分
となります。なお、最後の式は「2人合わせた速度の和×時間」という風に最初から考えていきなりこの式を立てても構いません。
2人合わせて進んだ距離が900mである訳ですから、
(分速90m+分速60m)×□分=900m
となり、
□分=900m÷(分速90m+分速60m)=6分 (答え)
と算出されます。慣れてくると最後に答えを算出している式のみを書くようになると思います。
比を使った解き方
難度の高い文章問題へ向けては次に述べるような思考方法は必須であると感じています。
改めて線分図を書きます。
兄--→←-弟
進む距離は速度に比例しますので、2人が進んだ距離の比は
兄:弟=90:60=3:2
と分かります。従って例えば兄に着目すると
進んだ距離=900m×3÷(3+2)=540m
その所要時間=540m÷分速90m=6分 (答え)
と分かり、これが答えとなります。
当然ながら弟に着目しても、
進んだ距離=900m×2÷(3+2)=360m
その所要時間=360m÷分速60m=6分 (答え)
と同じ答えが導かれます。
このような思考方法が難度の高い文章問題に向けては必須である点に関しては、後半で述べたいと思います。
以上が「出会い算」の基本となります。
追いつき算
例題.弟が家を出てから5分後に兄が家を出発し追いかけました。弟は分速60mで、兄は分速90mで歩きます。兄が弟に追いつくのは兄が出発してから何分後ですか。
(この問題は私の自作となります)
標準的な解き方
線分図を書くと以下の通りです。
兄-----→
弟-→---→
弟が「-→」の部分だけ先に歩き、その後に兄が出発して、トータルでは2人とも同じ距離を歩いたことを表しています。すなわち、家から追いついた地点までに2人が歩く距離は等しくなります。
弟が先に1人で歩いた「-→」の部分の距離は
分速60m×5分=300m
なので、兄はこの距離を2人の速度の差で詰めることになります。すなわち兄の出発後、2人の距離は1分あたり、
90m-60m=30m
縮まりますから、
300m÷毎分30m=10分後 (答え)
に2人の差はゼロになり、すなわち兄が弟に追い付くと分かります。
これを1つの式で書くと、
300m÷(分速90m-分速60m)=10分後 (答え)
となります。
比を使った解き方
出会い算の時と同様に、比を使った解き方も記します。
改めて線分図を書きます。
兄-----→
弟-→---→
兄が出発してから2人が同時間で歩いている、
兄の「-----→」と、
弟の「---→」
の距離の比は速度比より
兄:弟=90:60=3:2
と分かります。従って先に弟だけ歩いていた「-→」の部分はこの比の数値で言えば
3-2=1
と分かります。これが先述の計算より300mである訳ですから、兄が歩いた距離は
300m×3倍=900m
と分かります。従ってその所要時間は
900m÷分速90m=10分後 (答え)
となります。
弟の「---→」に着目しても
距離=300m×2倍=600m
所要時間=600m÷分速60m=10分後 (答え)
と同じ答えが出ます。
また検算として弟のトータルを考えると、
分速60m×(先行5分+同時10分)=900m
となり、兄の歩いた距離と一致しています。
以上が「追いつき算」の基本となります。
難度の高めの問題を実際に解いてみる
あまりに難しいものはやめますが、「公式に当てはめる」とか「パターンを丸覚え」などでは到底太刀打ち出来ないような問題をいくつか実際に解いてみます。
自分で問題を作って自分で解いても自作自演のようで意味が無いので、質問サイトの過去ログから問題を引用して解いていきたいと思います。
なお、上で解説した内容は理解されているという前提で、線分図などは適度に端折って解答を記しています。
例題1
池を一周するのにAは8分、Bは7分かかります。
同じ所から反対の向きに歩き始めました。
二人が出会うのは何分何秒後ですか。
解答(解説)
さっそくですが、この問題は距離も速度も登場しない問題となります。
・速度比は所要時間の逆比となるので
A:B=7:8
・従って2人が出会うまでに歩く距離は速度比より
A=7/15周
B=8/15周
・従って歩く時間は
A=8分×7/15=56/15分=3と11/15分=3分44秒(答え)
B=7分×8/15=56/15分=3と11/15分=3分44秒(答え)
※最後の答えはA、Bどちらか1つで構わなくて、もう片方は検算となります。
例題2
20分おきに電車が走っている線路に平行した道路で、自転車が時速12kmで走っています。この自転車は反対方向から16分おきに電車とすれちがっています。電車の速さは時速何kmですか。
解答(解説)
引用元の回答はいずれも方程式を使用していますが、ここではあくまで「算数」として解きます。
・仮に自転車の人が立ち止まっていれば電車とは20分おきにすれ違う。
・しかし実際には16分おきにすれ違うということは、電車の速度に自転車の速度である時速12kmを加えると、速度が20/16=5/4倍となると分かる。
・従って線分図で表すと、電車の速度が□□□□、自転車の速度(時速12km)が■として
□□□□■
・以上のように□□□□に対して■(時速12km)を加えると5/4倍になる訳だから、
電車の速度□□□□は
時速12km×4倍=時速48km(答え)
・検算
電車の運行間隔=時速48km×20分=16km
出会う時間=16km÷(時速48+12km)=16分 O.K.
例題3
周囲1㎞の池のまわりを、A、B二人がそれぞれ一定の速さで歩くとき、同時に、同じ場所を出発して、反対の方向にまわると6分後にはじめて出会い、 同じ方向にまわると30分後にAがBをちょうど一周追い抜く。A、B二人の歩く速さは、それぞれ毎時何㎞か。
解答(解説)
記述をすっきりさせる為にそれぞれの速度をA、Bという文字で記しますが、方程式(式の変形や値の代入など)は使用しておらず、あくまで「算数」の範疇の解き方となります。
・「反対の方向にまわると6分後にはじめて出会い、 同じ方向にまわると30分後にAがBをちょうど一周追い抜く」より、所要時間と速度は逆比であることから
(A+B):(A-B)=30:6=5:1
・すなわち
A+B=5
A-B=1
・従って和差算より
A=(5-1)÷2+1=3
B=(5-1)÷2=2
すなわち速度比は
A:B=3:2
・従って6分で2人合わせて1周1kmを歩く際、速度比より
Aは600m
Bは400m
歩いているので、
・答え
A=600m÷6分=分速100m=時速6km
B=400m÷6分=分速200/3m=時速4km
・検算
1km÷(時速6+4km)=1/10時間=6分 O.K.
1km÷(時速6-4km)=1/2時間=30分 O.K.
おわりに
今回は本シリーズの第2回でしたが、暫くは引き続き本シリーズを更新する予定です。
【算数】速度の文章問題の解き方の解説(1) 基本事項の解説(速度の公式の本質的な意味)
はじめに
今回を第1回として、何回かに分けて速度の文章問題に関する解説を記します。
「旅人算」とか「通過算」など色んなパターンの特殊算がありますが、今回は1回目ということで、いわゆる基本事項とその本質的な意味を述べたいと思います。
速度の公式と、それの本質的な内容
この項目の内容は、本ブログの別記事にて詳しく書き直しましたので、コチラをご参照下さい(別窓で開きます)。
おわりに
特殊算も難しいものになると、速度や距離などが値としては出てこないものなど色んな複雑なものがあり、「公式を当てはめる」とか「パターンで覚える」みたいなやり方では到底太刀打ち出来ないようなものが多々あると感じています。
逆に、上記の別記事で述べたような、本質的な部分が理解出来ていてイメージさえ出来れば、相当難しいものでも考えれば何とかなるものが多いという印象です。
そんな訳で、次回(2回目)以降は具体的な特殊算について解説していきたいと思います。